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吉田秀和氏の訃報を受け、小澤総監督よりメッセージ

吉田秀和氏の訃報を受け、小澤総監督よりメッセージ

吉田秀和先生の訃報を受け、大変なショックを受けております。知らせを受けてからこの数日間、私の頭の中では吉田先生のことがぐるぐると回っています。
月刊誌「すばる」の4月号に先生が私のことを書いてくれたのですが、あまりにも良いことばかり書いて下さったので、何だか照れ臭くて、御礼の電話をできずにいました。吉田先生には、用の有無に関係なく、割と気軽に電話をさせて頂いていたのですが、なぜ今回は電話をしなかったのだろうと、悔やまれてなりません。
 吉田先生は何もなかった戦後の日本に、齋藤秀雄先生、井口基成先生、伊藤武雄先生、入野義郎先生、柴田南雄先生と共に、後の桐朋学園音楽科の母体となる「子どものための音楽教室」を開設されました。私は「子どものための音楽教室」に途中から参加し、桐朋学園音楽科の一期生として齋藤秀雄先生のもとで指揮の勉強をしました。近年、ヴェネズエラの「エルシステマ」から優秀な音楽家が多く生まれていますが、その創設者であるホセ・アントニオ・アブレウ博士に言われたことがあります。「私がなぜエルシステマを作ったか、身を持って体験した君ならよくわかるはずだ」と。貧しく何もなかったあの時代の日本で、子供にクラシック音楽を教えよう、というのは今考えてもすごい発想だと思います。そしてもしあのとき「子どものための音楽教室」ができていなかったら、今の私はありえませんでした。ですから吉田先生は齋藤先生と共に、私の恩人の中の恩人、大恩人です。
 吉田先生は音楽教育を受けた方ではありませんでした。しかし先生の音楽に対する直感・感性はすごいものがありました。そして言葉のセンスがずば抜けていたことは言うまでもありません。先生の文章を読むと、その音楽が、あるいはその演奏家の演奏が聴きたくなります。そして何より私が羨ましかったのは、先生の卓越した語学力です。お陰で早い時期から、吉田先生は日本のクラシック音楽界の窓を世界に向けて開けて下さり、世界の著名な音楽評論家たちと交流し、私にも折に触れ、海外の音楽界の色々な情報を下さいました。
 水戸芸術館の館長になられた時、是非室内管弦楽団を結成して欲しい、と言われ、私は
桐朋学園時代からの仲間たち、潮田益子、渡辺實和子、安芸晶子らに声をかけ、水戸室内管弦楽団を結成しました。皆、世界で活躍するベテラン中のベテランではありますが、それでも私たちにとって、吉田先生はいつでも怖い先生でした。リハーサルの後に楽屋にいらして下さり一言二言感想を言って下さるのですが、それを聞く時はいつも緊張しました。ですから吉田先生が聴いていらっしゃる水戸室内管弦楽団で演奏する時は、まるで学校で試験を受けているような気分でした。この数年は、私の健康の問題で、コンサートをキャンセルすることも多く、先生には大変なご迷惑とご心配をかけてしまい、本当に申し訳なく思っています。ですが、必ず元気になり、これからも指揮者として、頑張って行きたいと思います。これからも吉田先生が見守っていて下さると信じて・・・。 

2012年6月1日 
  








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